厚生労働省が報告する「公衆浴場概要」によると、全国で営業許可が下りている公衆浴場は約2万6千件。そのうち一般公衆浴場、いわゆる「銭湯」は4,293件と報告されています。
昭和45年には浴場業の87%を占めていた銭湯の割合は、平成26年度には16.4%と激減。今や、銭湯はすたれつつある文化と言えるかもしれません。
そんななか、銭湯を地域コミュニティの場として復活させようとがんばっている店舗もあります。そのひとつが、石山にある「容輝湯(ようきゆ)」です。
古き良き時代の風格を残しつつ、地元から愛される銭湯として、2019年7月より営業を再開した「容輝湯」。経営者の代替わりもあり、これからの成長ぶりが気になる銭湯です。
容輝湯は、JR石山駅から南に歩いて約7分のところにある、利便性の良い銭湯。京阪唐橋前駅からは徒歩3分とさらに近く、電車での移動もしやすい立地にあります。
〒520-0855 滋賀県大津市栄町17-10
JR石山駅からなら、駅前にある「マクドナルド石山駅前店」の角を曲がり、「滋賀銀行石山支店」の方に向けて、ひたすら直進するだけ。途中、住宅地に入るため道が狭くなりますが、そのまままっすぐ進みましょう。
容輝湯のすぐそばにある専用駐車場は、4台分。併設されたコインランドリーを利用する方と共有で使用します。
【駐車場について】
当湯は4台ご用意しております!
一方通行ありますので、安全第一でどうぞ🚙♨️・赤ラインは時間帯一方通行
・青矢印は一方通行
・満車の場合はコインパーキングへ(緑丸あたり)#銭湯 #滋賀 pic.twitter.com/OdWraqBbhL— 容輝湯♨︎滋賀石山 (@youkiyu_1126) 2019年7月1日
昭和7年に創業した容輝湯は、地元で愛される銭湯として約80年の歴史があります。その間に、何度か経営者が変わり、現在は京都在住の銭湯活動家・湊三次郎氏が受け継ぎました。湊氏は、京都・滋賀にある古い銭湯を立て直す活動を行っており、そのひとつとして選ばれたのが、この容輝湯です。
もともとは2018年12月に閉湯となることが予定されていたものを、すばらしい歴史を誇る容輝湯を継続させたいという気持ちから再スタート。銭湯が大好きだという現在の店長、藤内ユキナさんが、店舗を任されています。オーナーの湊氏も、店長である藤内さんも将来が楽しみな20代。若い世代が、地域の銭湯経営を担っていることにも注目です。
容輝湯の歴史を物語るのは、なんといっても入口上部を覆う立派な唐破風。見事なこの屋根装飾は、もともと多くの銭湯で採用されていた建築様式ですが、今となっては関西でも数少ないものとなっています。
もともと日本の入浴の歴史は6世紀ごろに始まり、仏教の沐浴をルーツとして多くの寺院で欲堂を構えたことが始まりなのだとか。こうした理由から、銭湯でも寺院に類似する建築様式が多く採用されています。容輝湯は、そうしたルーツを意識したことがわかる寺院風の唐破風や白壁、角天井がみられるのも特徴的です。
容輝湯の特徴はまだまだあります。例えば、廃材を使ってお湯を沸かす昔ながらのやり方もそのひとつ。スーパー銭湯といったレジャー施設が増えるなか、そのほとんどが自動湯沸しを使っていたり、ガスによる湯沸しを行っていたりします。
しかし、容輝湯では手作業で、釜にマキをくべ、適温になるように調節されているそう。もちろん、自動券売機もなく、番台で430円を支払って払うシステムです。
入り口では、数字が書かれた靴箱に靴を入れ、懐かしい木札のカギで管理します。シャンプーやリンス、石けんなども販売されており、貸しタオルは1枚30円というリーズナブルさ!
入浴後に飲むドリンクとして定番の牛乳などはありませんが、ドリンク用冷蔵庫に保管されたミネラルウォーターやジュースは、どれも100円程度で購入できて良心的です。
というわけで、さっそく入浴体験へ。
脱衣所では、各ロッカー内にカゴが備えられており、温泉地に来た気分。
浴室に入ると、これまた懐かしい、黄色いケロリンの洗面器が出迎えてくれます。
容輝湯の浴槽は、全部で4種類。やや深めの薬湯と、座って足を延ばすのにちょうどいい浅風呂、そして、肩までじっくり浸かれる深風呂と、ジェット風呂です。
お湯の温度は41~42度程度ですが、浴槽によって体感が異なります。
薬湯は週替わりとなっており、今回体験したのは「クールバス」。暑い夏の入浴を、涼しげな気分に変えてくれるさっぱり系の入浴剤でした。
個人的にオススメなのが、深風呂。ゆっくり座ってお湯に浸かれるため、足を延ばして入浴するのが辛い方にも無理なく利用できます。
ジェット風呂では、3カ所から噴射されるお湯が心地よく、強すぎず、弱すぎずちょうどいい。
洗い場には2種類のシャワータイプがあるので、好みの方を選んでみて。シャワー部分を伸ばせる一般的なタイプと、シャワーが固定されているタイプがあります。
さらに、容輝湯では、一般の銭湯では珍しく、ボディソープやリンスインシャンプーが常時、備えられています。女湯には共有できるメイク落としや化粧水まで用意されているので、手ぶらで入浴できますよ。
さらに、女湯だけの特権と言えるのが、レトロな気分を味わえる「おかまドライヤー」があること。今ではほとんど見かけなくなった自動ドライヤー。手を使わずに、座っているだけで髪を乾かせるのがうれしいところ。たったの20円で3分間のヘアドライができるので、試してみてくださいね。
久しぶりに銭湯を利用して感じたのは、地域に根差す貴重なコミュニケーションスポットであること。現在店長として、番台を仕切っている藤内さんと、銭湯を利用するお客さんの笑顔を垣間見ながら、この風景を失くしたくないという気持ちがわかるような気がしました。
藤内さんは、大学生の時に銭湯を利用したことをきっかけに、社会人になってからも銭湯での掃除などを続け、現在は容輝湯の店長になったという経歴の持ち主。
藤内さんいわく
「銭湯は、人との距離が近く、人とのつながりができる場所。地域のコミュニティになりうることが、とてもおもしろいです」とのこと。
自家風呂が普及した今、あえて銭湯を選ぶ必要はないのかもしれませんが、まさに裸になってコミュニケーションできる場所は貴重です。
容輝湯を利用されるお客さんのほとんどは、近隣地域の方とのことですが、社会人の方もいれば、おじいちゃんと孫という組み合わせもあり、日常の延長のなかで多世代が集まる場所になっています。
ちなみに、大津市にある銭湯は、たったの8件。浴場組合が提唱する規定にのっとり、容輝湯でも、「日曜日の子供入浴料は無料」「偶数月の第3日曜日は65歳以上の入浴料が無料」となっています。
容輝湯の経営者が変わり、新しくスタートするなかで、日々、様子も変わっているようです。内装のちょっとした変化にも気づいて、喜んでくれるお客さんもいらっしゃるとのこと。「がんばってるな」とお客さんから声をかけられながら、少しづつ内装にも変化を取り入れているそうです。
藤内さんは
「昭和にタイムスリップできるというレジャー感覚で、小旅行的にたちよってくれたら」と話されます。
手ぶらで行っても気軽に入浴できる容輝湯なら、お出かけついでにも立ち寄れるはず。歴史を感じさせる場所として、また、ちょっとした気分転換ができるお出かけスポットとして、容輝湯を利用してみてはいかがでしょうか。
店舗名: 容輝湯(ようきゆ)
住所:〒520-0855 滋賀県大津市栄町17-10
入浴料:430円(貸しタオル 30円、その他石けんやシャンプーなどの販売あり)
営業時間:15:00~24:00
定休日 :毎週 火曜日
駐車場 :最大4台(併設のコインランドリー利用者と共有)
Twitter:容輝湯♨︎滋賀石山
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